日本では繊細な貴金属箔とそれによる優れた芸術作品が、昔からつくられてきました。


1164年、平清盛が平家一門の福徳を祈願して、厳島神社に国宝『平家納経』を奉納しました。
金銀で装飾された豪華な料紙は紙に施された箔技術の集大成ではないでしょうか。

 

『平家納経』では箔装飾は多様です。その技術は現代にまで伝えられ、丁寧につくられる金箔は、
仏教美術「截金(きりかね)」、世俗の空間芸術「砂子・切箔」として輝き続けています。

砂子切箔

砂子師という専門職によって
屏風、襖などの空間装飾、装飾料紙などに用いられてきた技法です。
そのほかにも着物の装飾など様々なものを彩っています。
箔によって空間と時間を表現することが多いです。

箔を篩の網目を通して
細かくしたものを「砂子」とよび、
これを用いた箔技法も「砂子」といいます。

砂子筒を使い、空間の奥行き、時間の流れをあらわします。

「霞」と「雲」は
絵巻物などで時間的経過、場面の転換、
空間の奥行きを示すために使われています。
そして時代が下るにつれ様式化されていきます。

竹刀で切箔をつくります。

針のように細く切ったものは「野毛」といいます。

不定形のちぎり箔をアクセントとして用います。

截金

截金師という専門職によって
仏教美術の荘厳(イルミネーション)に用いられてきた技法です。
現在では宗教美術だけでなく、
截金がメインとなる芸術作品が創られています。
箔の線を基本とし、四角、三角、丸、
様々な形の箔を組み合わせたデザインです。

截金の焼き合わせ箔は純度の高い金箔だけを複数枚焼き合わせます。
少し前の資料だと、2枚の金箔の間に仏師箔という金銀の合金の箔(銀が多い)を挟んで焼き合わせています。
金箔と銀箔を焼き合わせ時間が経過すると、金箔がオレンジ色に変化していきます。

箔盤においた合わせ箔を切ります。
このほかに四角、三角、に切ったもの、道具で丸やその他の形を型抜きます。

昔は銀箔、今はプラチナ箔なども用いられます。

二本の筆で線を誘導します。
かつてはこれ以外の方法もあったそうです。

その他の箔装飾

消金(金泥)を膠液でといて絵の具のように用いました。

箔を背景として、その上に描いています。

盛上げ(凸部をつくる)の上に箔をはっています。